果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

名付け親はとうの昔に亡くなっていた。

「ねえ」女は艶のある声でささやく。「あなた、今何を考えてるの?」男は紫煙を燻らせながら、「お前のことと、自分のことだよ……」「本当に?」「本当だよ」「ふふ……」女は男に枝垂れかかった。「でも、本当は別のことを考えているのじゃない? ほら、あなたの顔にはっきり書いてあるじゃないの。私がそれを読んであげ……きゃっ」男はベッドの上から女を突き飛ばした。女は何が起こったのか分からないといった風に、きょとんとした顔を男に向けた。「勝手に決め付けるな!」男は叫んだ。「在りもしない言葉を読むな! そんなことをしたら、きっと俺は俺じゃなくなるんだ! いいか! 俺にレッテルを貼るんじゃない!」