果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

『回廊』創刊号の感想。

http://magazine.kairou.com/

オンライン文芸マガジン『回廊』
読み終わったので感想書きます。長くなると思うので前置きもそこそこに。掲載順でいきますよ。

  • 表紙

ぶっちゃけた話、絵は下手ですよね。デザインは、すっきりしてて良いと思います。でも、どんな内容の雑誌なのか、何が一番の目玉なのか、が分かり難いのは欠点だと思います。

  • 目次

これは格好いいな。

  • 《インタビュー》『渡辺僚一の世界』

巻頭インタビュー。個人的には創刊号での一番の見所だと思う。というか、実は『回廊』の創刊号が出たときからずっとこれは読みたかった。『冬は幻の鏡』はネットの体験版が出てからずっと気になっていた作品だったので。あのシステムは『ブギーポップ』を彷彿とさせるというか、僕もあんなノベルゲームを作りたかった頃に丁度その存在を知ったので、これは完成したらやらねばなるまい、と。だからその作者である渡辺僚一さんのインタビューも読みたかった。だけど、『回廊』をDLするのは面倒だった……いや、面倒ながらもDLはした気がする。しかしPDF版を落としただけで、印刷なんて七面倒くさいことはやらなかった。で、PDFのまま読もうとしたらすごく読みにくかったので読むのをやめてしまった。HTML版も似たようなものだろうと思ってDLしなかった。それから一年以上の時を経て、ようやく僕は『回廊』を読んだわけだけど……もしも『回廊』が製本された状態でコミケ会場で売られていたら、僕は買って読んだとおもう。インタビュー読みたかったし。自分で製本した創刊号を見て、確かに並々ならぬ熱気をこの雑誌からは感じるし。――って、ああ、初っ端から脱線しまくりじゃないか。方向修正して、インタビューの感想を書きます。
こういうQ&A式のインタビューよりも、実際にその場で会話したものを編集したもののほうが、僕は面白いと思う。その点が少し残念だった。けれどQ&A式にしては面白いインタビューになっていたと思う。読む価値のある良質なインタビューでした。

距離を克服するための戦いの序幕。距離では裂けない信頼を信頼すること。
蛇足ですが、読点が少なくてちょっと読み難かったです。

  • 超短編》秋山真琴『BI-BICYCLE』

人一人分の重さってのは、実際に体感しないとなかなか理解できないものです。

ゲームノベルというかゲームブック。少しだけ懐かしい。とか思いつつも読みました。でも面白かった。但し途中で飽きてきた。ゲームブックって正直微妙な物だと思います。だけど実験的な要素は楽しめたし、ゲームブックってこんな事も出来るのか、と驚きもありました。十九番の「あなたは好きなことを考えてよい。」という一文が素晴らしい。ゲームノベルというのも捨てたものじゃないのかもしれない、と思いました。でも何が三段論法なのかが分からなかった。

  • 《連載小説》雨下雫『喪失の筺 夢幻の繭』

空の境界』のオマージュだそうで。なるほど。文体は夢枕なのですか? あの人の文章を読んだことがないのでわからないのですが。正直、読みにくかったし面白味のない文章だなあ、と思いました。文学フリマで入手した「殺人紳士」というのも似たような感想を持ちました。最初はよくわからなかったのですが、奈須きのこっぽいのかなあ、と思ったら少しずつ楽しめるようになりました。でもこの第一話だけじゃあんまり楽しめないですねえ。リーダビリティが低いと思います。アクションとか、謎解きとか、そういうのがあるんだかないんだかわからないし。主人公たちの能力を延々と地の文で説明されても退屈です。とにかく、この話だけで「楽しめ」「理解しろ」と言われても、それは無理ですよぉ、といった感じです。他の話を読んでから改めて評価します。ところで『雲上』に載ってた人物紹介とかって、ネタバレじゃないんですか? 誰が死ぬとか、死なないとか書いてあったような。

  • 《コラム》ていこく『ゲーム製作講座』

良いと思います。初心者に向けて分かり易い説明を目指したのだなあ、と思いました。写真を使ったり、スクリプトを初心者にわかるように翻訳するなどの工夫が評価できます。ただ、写真の番号と説明書きをもう少し見易い位置に配置してほしかったです。あれではぱっと見たときに、どの写真が何番なのかわかりにくいです。

  • 《読切小説》kude『タイムマシン』

これはとっても陳腐な話。発想も構成も展開も落ちも陳腐です。つまり、ありきたりです。しかし、陳腐だから、ありきたりだからその小説がつまらないかというと、それとこれとは全くの別問題です。これは面白い小説です。ショートショートとして充分完成していると思います。楽しめました。

  • 《読切小説(?)》芹沢藤尾『陽炎の夏』

「お、これはなんか面白そうだぞ」と思わせておきながらあのブツ切ったラストは何ですか。ある意味で読者への挑戦? これで充分だろうという事? かなり困惑いたしました。と思っていたら、同じタイトルの作品が『回廊二号』にも載っているみたいじゃないですか。連載だったのですか? 困惑しまくりです。続きがあるなら読みたいです。二号で読めるのかな?

  • 《連載小説》キセン『EGOISTIC IMAGINATION RAW-LAW』

「キセンちゃん、危険じゃん!」
こ、これは……ええー……。いや、面白かったんだけども。キセンさんの小説を読むのはたぶん初めてだと思うのですが、上手いというか、才能ありそうというか、でもこの方向性は……滝本竜彦の『NHKにようこそ!』を彷彿とさせながらも、方向的には逆の結末に行ってしまうのですか。この小説の主人公と少女の関係は、『HNK』の佐藤くんと岬ちゃんの関係に似ていると思うのですが、『NHK』が互いに助け合う物語なのに対して、この小説の二人は全然助け合おうとかしないんですね。そういう発想自体がないような。そりゃあハッピーエンドはないよなあ。連載とはいっても毎回違う話が語られるようなのですが、次回以降もこういう感じなんでしょうかね。面白い小説ではあるけど、なんか不安感が拭えません。あと『雲上』で連載しているエッセイは『超人計画』に似ているなあ、と思いました。
扉絵は創刊号のなかで一番格好良い。でも、奇数ページの左下がタイトルロゴで文章消えてるのは酷いと思う。二号以降ではこういうミスはなくなっていることを願っています。

  • 《読切小説》秋山真琴『羊の小屋』

お、これは面白いぞ。『世にも奇妙な物語』や荒木飛呂彦の短編のような雰囲気が良い。しかし羊のパターンの意味はわからなかった。作品の深いところは理解できていないけれど、その表面をなぞるだけでも心地良い肌触りが感じられる良作。

  • 《連載小説》蒼龍『コロシの罪 REBIRTH』

これだけ長いな。しかも他の小説と比べて明らかにクオリティが低い。何年か前の作品だそうですが、できれば書き直して載せて欲しかった。あの文章では全く作品内の雰囲気を感じられません。話自体も単調で、リーダビリティが低いです。謎の提示と解明をもう少し上手に扱った方がいいと思います。ストーリー物というより、ワンアイディア的な作品なのに単調な文章で長々とやられては退屈です。――でもこれで後編がすごく面白かったら驚くよ?
自分を棚に上げて酷いことを言っていますが、『回廊』に於いては、こういう感想も有りだと思うし、且つ、こういう作品も有りだと思います。オンラインで活動している作家のことを僕は良く知りませんけど、彼ら彼女らの技量はかなりばらついていると想像しています。上手い人もいれば下手な人もいるでしょう。しかし、商売じゃないんだから、上手いとか下手とかを絶対のバロメータとして捉えてはいけないと思います。下手な人だって、たくさん書けば上手くなります。しかし、実際には一人で書き続けていても向上は難しいものです。しっかりとした志がある勉強熱心な人なら、独学でも上手くなれるでしょうけど、世の中そういう人は決して多くありません。ぶっちゃけ程度の低い凡人ばかりです。そんな多くの凡人が上達するには、小説を書くだけでなく、読んでもらい感想や助言をもらうことも必要であると僕は思います。だからこそ、オンラインで小説を発表する場が重要なのです。僕は詳しくは知らないのですが、ネット上ではそういうサイトが幾つかあります。そして『回廊』も、「作者をつなぐオンライン文芸マガジン」を名乗るのならば、そのようなネットに無数に存在する作者のための場として機能してほしいと思います。沖方丁が『沖方式ストーリー創作塾』で小説業界に最も必要な存在として語った、「千人の中堅作家と、一万人の新人と、百万人の同人作家」が育つための場として『回廊』が機能していくことを、僕は期待しています。
(偉そうなことを言ってますが、既に四号まで出ている雑誌の創刊号だけを読んで、その雑誌の方向を勝手に語るというのは自分でも格好悪いと思います。それに僕はまだ『回廊』に触れたばかりです。次号以降を読みすすめていくうちに、上で書いた意見をすぐに撤回してしまうかもしれません。というか『回廊』についての諸々は秋山さんに直接聞いてみたいですね。僕がもっと『回廊』を読み進めた後、機会があれば是非。>秋山さん)

  • 超短編》芹沢藤尾『COME BACK BY BROTHER'S LOVE』

これ、好き。ラストの落ちで全てが萌えに変わる瞬間に驚愕。戦慄。
誤読かもしれないけど、たとえ誤読だとしても面白いから満足ですよ。でもやっぱ明らかに作者の意図と違うところを楽しんでる気がしてならない。ま、それもまた一興。

  • 《コラム》星点『コンピュータでゲームを作成することの考察』

これは面白くなかった。全く新しいことを語っていないように思えた。そのくらいのことは誰でも考えるのではないか、と思った。その考察を文章という誰でも読めるような形にしたことには価値があるかもしれないが、そこまでの価値しかないと思う。もう一歩踏み込んだ考察を読みたかった。
――っていうのは言い過ぎですね、明らかに。プロでもないのにそこまで責任を追及されてもちょっとなぁ……って感じですよね。ごめんなさい、星点さん。感想なんて、真に受けない方がいいですよ? 最終的な判断はいつだって自分の知識と経験と思考だけですよ? 他人の意見とか、最終的には塵ですよ。ほんと。(これも言い過ぎたか!?)
楽しくいこうぜっ!

  • 《連載リレー小説》謎の覆面作家A、闇の仮面作家B『華麗なる晩餐!』

「華麗なる」って非常に間の抜けた言葉だと思う。僕は嫌いだ、この言葉。ギャグにしか使う気になれない。だからこのタイトルを見た時点で、かなり期待は薄れていた。でも意外と面白かったよー。はははー。惟月いいね、惟月。第一話の展開も上手いし、第二話の新キャラもよさそう。
でも企画の内容がよくわからなかった。一話と二話を書いている人は別人なの? それを予想して当てればいいの? その人はこの創刊号に小説を載せている人なの? もう少し詳しいルールにページを割いてほしかった。どこに回答を送ればいいのかも書いてない気がするのですが? 企画としては不親切だと思う。ちなみ『電撃hp』でたまにやっている作者当て競作と似ているなあと思った。個人的にはあまり興味がない。なぜなら予想が外れたら負けた気分になって嫌だと思うから。でも完全版はちょっと欲しいぞ。

  • 書評

普通に面白かった。いいと思いますよ。読みたくなるかどうかは、また別の問題だと思います。

  • 巻末座談会

座談会といいながらも、ほとんど秋山リサイタルな気がした。別に悪いとは思いません。それなりに面白かったです。というか、むしろ雑誌なんだからこういう雑な部分がもう少しあってもいいんじゃないの、とか思った。まあ、難しいところではあるか。

  • 編集後記

あつっ!! 熱いよ、秋山真琴! なにこいつ!? あ、いや、「こいつ」とか言ってごめんなさい。
っていうかわざわざ言うべきことも特に無い。大丈夫届いたオーケーオーケー。

  • 裏表紙

バーコードの数字の意味が解らなかった。あ、裏表紙が取れた。表紙も。そのうちもう一枚刷るか。

  • 雑誌全体として

誤字が多い。ちょっと致命的だと思う、これは。改善してください。
あと他にはー、言いたいことはいろいろあったんだけど、個々の作品の感想のなかに混じっちゃったからここで言うことがなくなってしまった。もう疲れたし、言いたいことがまた出来たら適当に書きます。今日はもう、この辺で。ここまで読み終わった人、お疲れ様ですー。

借りてる森博嗣とかスタニスワフとかを消化しながら、二号を読み始めようと思います。二号こそは四つ穴綴じにしたいなー。