果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

桜庭一樹・桜坂洋『桜色ハミングディスタンス』

今年の文学フリマにて、二人の作家が出した共作。
基本はリレー小説みたいな感じだけど、自分の番にどこまで書くかの判断は自由で、しかも相手の書いた文章は勝手に書き直したり書き足したりしていいというルールで書かれたらしい。その点が非常に活きている良い作品だと思う。
主人公二人が迷い込んだ学園でのシーンとか台詞とか設定とかが上手いなあ、と思った。あと、二人の作者がお互いの文章を勝手に書き直すので、一つの文体の中に二つの人格が混ざり混んでいて、この部分が非常に面白かった。この文章を読むためだけに買ったとしても、それほど損をした気分にはならないと思う。
かなり面白い作品で、同人誌という媒体は勿体無いような気もするものの、一般に向けて売るには少し対象としている読者層が狭い気もするので、文学フリマあたりで売るのが丁度良いのかもしれない。
来年もこういう面白い小説が、文学フリマで読めるといいなと思う。