浦賀和宏『記憶の果て』
- 作者: 浦賀和宏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1998/02/01
- メディア: 新書
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さて、浦賀。初浦賀ではないけれど、今まで読んだのは密室本の『浦賀和宏殺人事件』とファウスト四号の『ポケットに君とアメリカをつめて』。この二つを読んだ限りでは浦賀和宏という作家がどういう作家なのかピンとこなかったのだけど、デビュー作である『記憶の果て』を読んで、ようやく「これが浦賀か」と思えた。
冒頭から終盤にかけて、ずっと暗い。そして謎や疑問がひたすら出現し、それに主人公が次々と独りよがりな回答を与えていく、といったような内容。ミステリの話の転がし方としては、何だかなあ、って感じがするけどこれはSFですよね、たぶん。ミステリのような安心感を与える解決はどこにもなくて、ただただ悩みの深みにはまっていく展開はSF的というか思索的です。ミステリを装ってこんなものを書いてきた才能は、やはり評価されるべきでしょうというか評価されてるんですよね浦賀って。なんか、佐藤や舞城と比べるとパッとしないイメージあるんですが。でも18歳でこれを書いたというのは、やはりすごい事実。
エンターテイメントではないけど、割と楽しめました。実は本書はシリーズの一作目ということらしいので、二作目以降もけっこう読みたくなってきた。安く売っていたら買いそうです。
話が脱線しますが、以前、友人に「何か面白い小説を数冊貸してくれ」と言われて、これを貸してしまった。舞城とか新井素子とかと一緒に。その時僕はこれを未読でした。でも貸しちゃった。エンターテイメントを求めていた友人に貸しちゃったんですよ。案の定、「全然つまらんじゃないか」と怒られました。あんときはごめんよ、僕もまさか中身がこんな小説だとは思っていなかったんだ。今度から未読の小説を無責任に薦めるのは自重します。
次回は、星野桂『ディーグレイマン』か、麻耶雄嵩『闇ある翼』じゃないでしょうか。