果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

グレッグ・イーガン『しあわせの理由』

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

万物理論』がやたら面白いという書評などをよく見かけていたので図書館で借りることに。しかし他の人が借りていたので、代わりに本書を借りてきた。短編集です。
すごい、おもしろい。
SFってあまり読んだ事ないんですけど、これはきっとSFの中でも最上級だろう。いや、わからないけど。でもそう思わせるくらい面白かった。専門用語などの難しい話も混じっていてその辺りは理解が追いつかないんだけど、お話自体はむしろ「文学」っぽい感じだったので読むのはそれほど苦ではなかったです。巻末解説の方でも、「文系」だの「哲学」だのという言葉を用いて理系の知識ない人にもわかるように解説していたし、そういう意味では、あまりSF読まない人でもとっつきやすいSFかもしれない。
九編の短編が収録されていて、どれも非常に素晴らしいです。個人的に気に入ったのは「道徳的ウイルス学者」のオチ。「こんなに素晴らしい閃きをかくも容易く獲得できたのは、世界で自分一人に違いない」と妄信する瞬間の、ダメな快感が全身を駆け巡る瞬間。真っ暗なオチだよなぁ、これ。