果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

京極夏彦『魍魎の匣』

魍魎の匣 (講談社ノベルス)

魍魎の匣 (講談社ノベルス)

前巻の『姑獲鳥の夏』がやたら怖い話だったので今度はどれ程怖いのだろうかと興味本位で、怖いもの見たさで読み始めた。気付いた時には匣の中にいた魍魎に憑かれていた。
魍魎の匣』というタイトルがこれ以上ないくらいに巧い。この小説のページを捲るということは、中に「もうりょう」と書かれた紙が入った匣を開くことに他ならない。読んでいると見えないはずの魍魎が見えてくる。語り手である関口巽のように魍魎に惑わされ易い人が読む時は、あっち側に連れて行かれないように気をつけた方がいい。
姑獲鳥の夏』もそうであったけど、この小説も中盤までは普通に面白い小説として読める。普通以上に面白い小説、といって良いと思う。けれど、黒衣の男――京極堂が憑き物を落とすために事件に関わった瞬間、忌まわしい妖怪が極大の恐怖を現出させる。見たくないものを見せられ、聞きたくないことを聞かされる。それらのなんと怖いこと。
――にしても、本当に分厚い小説だな。これを読んだ後だと、あれ程分厚く感じていた『姑獲鳥の夏』が薄っぺらく見えるから驚きだ。しかも次巻以降はさらに分厚くなってる様だし。文庫版はサイコロ本とか呼ばれてるらしいし、本書はやはり「小説のような匣」だろうよ。
次は、『狂骨の夢』なんだけど、敢えて天邪鬼に順番通りに読まない事にチャレンジしてみたい。『絡新婦の理』なんかが面白そうだ。……と、本書読書中は考えていたのだけど、話の中で何度も「順番が大事なのだよ」と繰り返していたので、やはり素直に順番に読んだ方がいいのかも知らん。
(あ、あと『姑獲鳥』に比べて吃驚する程キャラの魅力が増加していた。キャラの人気が高いシリーズという風評がようやく納得できた)