京極夏彦『魍魎の匣』
- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/01/05
- メディア: 新書
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『魍魎の匣』というタイトルがこれ以上ないくらいに巧い。この小説のページを捲るということは、中に「もうりょう」と書かれた紙が入った匣を開くことに他ならない。読んでいると見えないはずの魍魎が見えてくる。語り手である関口巽のように魍魎に惑わされ易い人が読む時は、あっち側に連れて行かれないように気をつけた方がいい。
『姑獲鳥の夏』もそうであったけど、この小説も中盤までは普通に面白い小説として読める。普通以上に面白い小説、といって良いと思う。けれど、黒衣の男――京極堂が憑き物を落とすために事件に関わった瞬間、忌まわしい妖怪が極大の恐怖を現出させる。見たくないものを見せられ、聞きたくないことを聞かされる。それらのなんと怖いこと。
――にしても、本当に分厚い小説だな。これを読んだ後だと、あれ程分厚く感じていた『姑獲鳥の夏』が薄っぺらく見えるから驚きだ。しかも次巻以降はさらに分厚くなってる様だし。文庫版はサイコロ本とか呼ばれてるらしいし、本書はやはり「小説のような匣」だろうよ。
次は、『狂骨の夢』なんだけど、敢えて天邪鬼に順番通りに読まない事にチャレンジしてみたい。『絡新婦の理』なんかが面白そうだ。……と、本書読書中は考えていたのだけど、話の中で何度も「順番が大事なのだよ」と繰り返していたので、やはり素直に順番に読んだ方がいいのかも知らん。
(あ、あと『姑獲鳥』に比べて吃驚する程キャラの魅力が増加していた。キャラの人気が高いシリーズという風評がようやく納得できた)