果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

日日日『蟲と眼球とテディベア』

蟲と眼球とテディベア (MF文庫J)

蟲と眼球とテディベア (MF文庫J)

遂に出揃った日日日の『五冊』、その『一冊目』を読みました。*1
あとがきで作者自ら書いてますが、「コメディの舞台と設定でシリアスな話を書」いてしまった本作。ヒロインの名前は眼球抉子(がんきゅうえぐりこ)で、あだ名がグリコ。得意技はスプーンで眼球を抉ること。決め台詞は「眼球えぐっちゃうぞ」。もうギャグ以外の何者でもない。でも何故か話はシリアス。――いやあ、良い話でした、面白かったよ。って感想はちょっと温めか知らん? ええっとね、ほら、構成とかちょっと甘い部分あるよね? こんなもんで、どう?
アンダカ』と『狂乱家族』の時は「インパクトが足りない」なんてことを感想に書いていましたが、それはちょっと主観が過ぎた言葉だった気がします。たぶん『アンダカ』を読んだときの僕は「日日日の小説はあまり個人の才能が感じられない」みたいなことを思ったのだと思います。佐藤友哉とか西尾維新とか舞城王太郎とか、デビュー作で既にその類稀なる才能の一端を見せ付けている作家たちと比べて、日日日は見劣りする気がしたのでしょう。でもそれは明らかな視野狭窄であって、小説は才能だけで書くものではないということを僕はうっかり忘れていたようです。小説を書くという行為は、才能だけではなく技術も必要とします。というより職業作家に求められるのは才能よりも技術であると言った方がより正しいと思います。そして日日日が持つ技術はかなり高い水準にあります。今現在の日日日が高い評価を受けるとしたら、まずはその点であるべきでしょう。
っていうかそんな小難しい話はさておいて、「眼球えぐっちゃうぞ」が個人的に大ヒットです。流行らないかな、コレ。
あとゲッターとかカービィとかが印象深かった。日日日ってやっぱそんな奴なのかな。ワンワンパニック世代なのかな。いや、そんな世代聞いたこともないけれど。

*1:でも実は『一冊目』の意味がわかっていない。最初に応募した作品なのかな?