果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

種田陽平『The Art of かまいたちの夜2 三日月島』

サウンドノベルのゲーム性の高さを世に知らしめた、前作『かまいたちの夜』と比べて、著しくゲーム性が低いことで有名な『かまいたちの夜2』。他にも、三人の作家(安孫子武丸、牧野修田中啓文)が共同でシナリオを作ったとか、音楽にパッパラー河合羽毛田丈史東儀秀樹が参加したとか、種田陽平美術監督を務めたとか、良い話題にも事欠かない。要約すると、映像作品としては素晴らしいクオリティを持っているし、シナリオも良く出来てる、なのに「前作の方が面白かったよ」とファンを嘆かせた困った作品。
その困った作品から、背景美術の部分だけ抜き出したのが、本書。孤島、館、廃村、洞窟、と素敵な背景が揃っていてとってもラブリー。三日月館と呼ばれる環状に建てられた館が不気味な雰囲気で良いんですよ。そりゃあ、こんな場所に人が集まってくれば、殺人くらい起こりますよ。島にある廃村の寂れた感じも、疲れた心に染み入ります。島の高い場所から見下ろした海の風景も綺麗です。殺人鬼に追われながらこんな風景を見たら、さぞかし絶望的な気分になるでしょう。
ゲーム中の背景の原画以外に、種田陽平と長坂寿久の対談もなかなか面白い。種田陽平が『かまいたちの夜2』で、映画からゲームへどのようなアプローチを仕掛けたのか、などが書かれていて興味深い。しかし二人とも、映画の話ばかりしてゲームの話はあまりしてません。まあ、種田陽平の仕事はゲームの面白さにあまり貢献してませんからね。
結局のところ、『かまいたちの夜2』は「素晴らしい映像作品」ではあるけど、「ゲーム史に残る名作」にはならなかったわけです。
次回は、『幻想水滸伝3』の漫画の新刊。