果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

J.D.サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

ナイン・ストーリーズ (新潮文庫)

僕は読み方が雑なので、こういう話は半分も理解できません。半分くらいでも面白いです。九つの短編それぞれで面白かった会話を抜き出して感想の代わりにします。しますつもりっだたけど、九つ全部やると長くなるので、三個くらいにしときます。
『バナナフィッシュにうってつけの日
コネティカット州ホヮーリー・ウッドか」と青年は言った「ひょっとしたら、そいつはコネティカット州ホヮーリー・ウッドの近くじゃないか?」
 シビルは彼を見やった。「そこがそのまんまあたしの住んでるとこよ」じれったそうにシビルは言った「あたしはコネティカット州ホヮーリー・ウッドに住んでるの」
「それで万事がはっきりした。きみが思いも寄らないほどはっきりしたよ」
コネティカットのひょこひょこおじさん
「L・マニング・ヴァインズだって。聞いたことあって、あんた?」
「ううん」
「あたしもよ。誰だって知りゃしないさ。アラスカで餓死した四人の男のことを書いた本があるんだって。ルーはその本の名前も覚えちゃいないんだけど、あんなに良く書けてる本は読んだことがないって言うの。おふざけでないよ! 正直に言っちゃったらいいじゃないか、四人の男がエスキモーの氷の家にこもって餓死する話が気に入ったんだって。それをあの人はね、良く書けてるなんて言わないと気がすまないんだからね」
「それは少し酷だよ、あんた」とメアリ・ジェーンは言った「ええ、酷な見方ですよ。ひょっとしたら、実際に良く書けてる――」
「いいえ、絶対にそんなことない」
『愛らしき口もと目は緑』
「いやね、おれが自分の首やなんかが心配で、また電話をかけ直したとかなんとか、そんなふうに思わせちゃいかんと思ってね。そうじゃないんだから。根本的にはね、おれ、首のことなんか、本当にちっとも気にしてないんだよ。ただね、それほど脳味噌をしぼらなくても若社長とのわだかまりをなくすことがもしできるんだったら、それをやらずに――」
「あのね、アーサー」白髪まじりの男は、額の手を取りながら口をはさんだ「急にひどく頭痛がしてきたんだ。どうしてこんなことになったのか、見当もつかんが。すまないけど、この電話切らしてくれないか? 明日の朝また話すから――いいかい?」それからちょっと耳を澄ましていて、男は電話を切った。