果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

森見登美彦『四畳半神話大系』

四畳半神話大系

四畳半神話大系

笑っていいのやら哀しんでいいのやら、判断が難しい大学生のダメ生活を子気味よいユーモアな文体で語っている良作。
この作品において注目すべきは二点。理想と現実の大きな溝を描き出す饒舌な文体と、主人公の愛すべき親友として登場する小津である。この二つを避けて本書を語ることはできないだろう。特に小津に関して、「他人の不幸をおかずにして飯が三杯喰える」と称されるほどの子悪党ぶりを見せる彼の活躍は、主人公と同等かそれ以上の注意をもって読み解いてほしい。
もう一つだけ。本書に収められた四編の話のうち、最終話の「八十日間四畳半一周」で描かれている極限状況は、読者に計り知れないせつなさを覚えさせること間違いない。