果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

万城目学『鴨川ホルモー』

鴨川ホルモー

鴨川ホルモー

ボイルドエッグズ新人賞第四回受賞作。受賞時点ですでに審査員から指摘されていたようですけど、同じく京大生の大学生活をモチーフにした森見登美彦の作品とは重なる部分が多い。ただ、相通じる部分が多いのと同時に、二人の作者が目指してる方向はまた違うように感じます。端的に言って、森見よりも万城目のほうがエンターテイメント性が強いと思います。*1
ホルモーという謎の競技を活動内容としているサークルに入ることになってしまった京大生が主人公の物語。阿呆らしくも勢いのある展開の数々や、「物忌み」などに特に象徴される駄目学生の精神の描き方が巧みです。ややご都合的と思わなくもない展開も目に付きますが、とにかく読んでいて絶えず「面白い!」と思わせてくれるのだから、そんなことは些細な問題といえるでしょう。
ボイルドエッグズ新人賞を受賞した作品はこれで三作目のようで、僕は第三回受賞の『コスチューム』だけ読了済みで、第一回受賞の『本格推理委員会』は未読なのですが(第二回と第五回は受賞作なし)、本作は受賞作の中でも特に面白い作品だと思います。「ボイルドエッグズ新人賞って、正直微妙……」と思って手を出さないのはもったいないですよ。

*1:まあ、単純に比較できることではないですし、森見が万城目に劣っているということでもないです