果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

小林泰三『玩具修理者』

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

大学の後輩にすすめられて読んだ小林泰三のデビュー作。小林泰三の作品を読むのは初めてで、面白いとはきいていたけれど具体的にどう面白いのかは皆目検討もついてなかった。で、読んでみたら、これがとても面白かった。表題作の「玩具修理者」は非常によくまとまった短編だし、「酔歩する男」のめくるめくSF的思考実験的な物語も楽しめた。SFとミステリとホラーが綺麗にあわさって純度の高いエンターテイメント小説になっている感じ。
映像イメージが浮かびやすい文章なので、玩具修理者が玩具を修理する場面なんかは印象に残りやすいし、特にそこで発生される「ぬわいえいるれいとほぅてぃーぷ!! まだなのか!?」なんかの奇声が異様な感じに拍車をかけてる。「くとひゅーるひゅー」とか、クトゥルフ関連の用語の使い方も上手いなあ、と思う。「酔歩する男」は、話が難しいというか、日常的な思考では理解しきれない。因果関係が崩壊した世界とか、そんなの、何でもありってことじゃないかと息巻くと、そのとおり、ここで語られているのはどんなことでも起こりうるし、あらゆる出来事が起こらなかった世界なのだと、そうはね返されてしまう。もう自分でも何言ってるんだかさっぱり。ただ一つ言えるのは、「こうして考えている自分は存在しているのだろうか?」なんて疑問を生み出してしまう物語というのは、秀逸であるなあ、ということ。