果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

いしいしんじ『絵描きの植田さん』

絵描きの植田さん

絵描きの植田さん

本の作りが良い。白い装丁に書き文字のタイトルは銀色。意識的に配置された余白のページによって全体的に白い印象が強調されていて、作中の雪景色を思い浮かべやすい。栞の紐が銀色というのも綺麗。ただ、図書館で借りた本なので帯がなかった。それが少し残念。
大切なものを失った植田さんが、田舎のゆるやかな時間の中で音を取り戻すまでの物語。いしいしんじはこういう感じの「何か欠けている人が、欠けた部分をどう埋めて生きていくのか」というテーマばかり書いていて、この話もそう。いしいしんじの作品を一つ読んで、それが面白ければ、他のどの作品を読んでも大丈夫だと思います。