果てしなき帰途の果に

yoakeroの雑文コーナー

コードウェイナー・スミス『鼠と竜のゲーム』

現代のいろんな作品の元ネタになっているらしいことで有名な人類補完機構シリーズ、その短編集。話には聞いていたけれど、上遠野浩平って本当にこのシリーズからすごい影響受けてるんだなあ、と実感。
同じ世界観だけど、時代や舞台が話によって全然違う。*1各作品の冒頭にある物語背景の注釈がなかったら、ほとんどの作品が独立しているようにも見えるくらいなので、注釈がとてもありがたい。『第81Q戦争』でも注釈を書いて欲しかったけど、あっちには年表があるので、それはそれで、まあ便利でした。
特に気に入った作品は、あまりに壮大なスケールのロマンスを描いた「星の海に魂の帆をかけた女」、人間以上に魅力的に思えてしまう猫とパートナーを組んだ男が出てくる「鼠と竜のゲーム」、読者への警句的な書き出しとラストのオチの繋がりが面白かった「スズダル中佐の犯罪と栄光」あたり。ほかの短編も良かったので、全体的に見ても面白かった。
いやしかし、「スズダル中佐」のあのオチはすごい! と個人的に思う。

*1:最初と最後の短編では、一万年もの時代差がある。